AKIRA.brog 7

夏の思い出

俺の地元は島根県の松江市で俺が幼稚園の頃から住んでいる。
生まれたのは長崎県だがその土地の記憶はあまり無く、その後に父親の転勤で大阪、広島と引っ越して最終的に島根県に収まった。
両親は二人とも山口県の日本海側にある萩付近の出身で、夏休みになる度に祖母の住んでる三隅町というところに兄弟で遊びに行っていた。
今日はそんな夏の思い出から一つ。

3人兄弟の末っ子の俺は何をするにしても長男、その次の長女の保護のもと育ち、一人で何かさせてもらうという事がなかった。
幼い頃は毎年の行事のように6時間以上かけて鈍行列車に乗って、山と空を稜線で切り裂くような風景の田舎の村によく3人だけで遊びに行っていた。
祖母の家の付近は本当に川と山しか無く、家の前を車が1時間に2、3台しか通らない国道が走っているくらいなのだが、曾祖母が働いていた湯免温泉という小さい旅館に唯一娯楽のプールがあり、夏の間はよく兄弟で泳ぎに行っていた。
しかし幼い頃の実際このプールで遊んだ思い出と言えば、とてもおぞましい恐怖体験しか無い。
何故ならサメが出るのである。
姉と二人で行ってる時には出ないのだが、7つ離れた長男と一緒に行った時は必ずと言っていい程サメが出る。
小学校1、2年生のおむつも取れたばかりのような子供にこんなに恐ろしい事は無い。
当時スピルバーグの映画で流行っていた「ジョーズ」がこんな田舎の村に、しかもプールに出るなんて聞いた事も無かった。
しかし兄が言うんだから間違いなかったのだ。
勇んでドラえもんの浮き輪を完全装備してプールに入ろうと何度も試みるが、そのサメは水面下を音も無く近寄って来るという。おちおちゆっくり入っていられない。
兄の言う事だと大体プールの真ん中くらいに居るらしい。
確かに良く見ると黒い影が中央に居るではないか!
他の人は大丈夫なの?と聞いてみると、地元の人には生かしてもらっている恩を感じていて噛み付かない、との事。
サメって案外頭がいいんだな、と変な事に感心しつつ、何故自分だけ狙われなければいけないのか考えるととても悲しくなった。
しかし真ん中付近に居るんだったら大丈夫だろうと端のほうでチャポチャポしていると、とたんにサメが近寄ってきて俺の足を水中に引っ張ろうとする!
俺はその度に大声をあげて慌ててプールから飛び出るのだった。
あんなに自分の恐怖を深く植え付けられたプールは後にも先にも味わった事は無い。
プールって泳ぎを楽しむ為にあるはずなのに。
そしてサメから逃げる為の泳ぎ方を教わった事は一度も無かった。
なので子供の頃は兄とプールや海に行くのが本当に嫌で嫌でしょうがなかった。
必ず何かしら怪物が水中から現われるからだ。
その真ん中付近をうろついていたサメがただの排水溝だと分かったのは小学校4年生になってからだった。


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